中国BYDに逆風、日本ではEV増税論
トヨタ自動車に追い風、日本自動車株は割安か?
目次
1. EUがエンジン販売禁止を「撤回」した意味
2. なぜEUはEV一辺倒政策を後退させたのか
3. 日本で進むEV増税議論と政策の本質
4. 中国BYDなど中国EVメーカーへの打撃
5. トヨタ自動車にとっての追い風要因
6. 日本自動車株の割安度と投資妙味
7. 投資家としての戦略と注意点
8. まとめ:EV時代の次に来るもの
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1. EUがエンジン販売禁止を「撤回」した意味
EUは2035年に予定していた「エンジン車販売の実質禁止」政策を事実上後退させました。従来はEVやFCVなど排ガスゼロ車のみ販売可能とする方針でしたが、新たに「2035年時点でCO2排出量を2021年比で90%削減」という現実路線へ転換しています。
この修正により、残り10%については内燃機関車の販売継続が可能となり、バイオ燃料、合成燃料、さらには一部のPHEV(プラグインハイブリッド)も容認される見通しです。これは単なる微修正ではなく、EV一辺倒だった欧州政策の大きな方向転換といえます。
2. なぜEUはEV一辺倒政策を後退させたのか
背景には三つの要因があります。
第一に、ドイツ・イタリアを中心とした雇用・産業保護の問題です。自動車産業は欧州経済の中核であり、エンジン技術の急激な否定は産業空洞化を招きかねません。
第二に、中国EVメーカーとの競争激化です。BYDをはじめとする中国勢は価格競争力で欧州市場を席巻しつつあり、EV一本勝負では欧州メーカーが不利になる構図が鮮明になりました。
第三に、EV需要そのものの鈍化です。補助金縮小やインフラ不足、電池価格の問題から、消費者のEV熱は想定ほど高まっていません。これらが重なり、EUは現実的な政策修正に踏み切ったと考えられます。
3. 日本で進むEV増税議論と政策の本質
一方、日本ではEVに対する税制の見直しが進んでいます。これまでEVは「排気量ゼロ」とみなされ、自動車税の最低税率が適用されてきました。しかし政府・与党は、車重に応じてEVの自動車税を引き上げる制度を2026年度税制改正に盛り込む方向で検討しています。
特に高級・重量級EVは道路への負荷が大きいにもかかわらず、税負担が軽いという不公平感が問題視されています。重要なのは、日本がEVを否定しているわけではなく、「重くて高価なEVへの増税」と「環境性能の高い車全体への支援」を両立させようとしている点です。
4. 中国BYDなど中国EVメーカーへの打撃
EU政策の後退と日本のEV増税議論は、中国EVメーカーにとって逆風です。BYDは純EVおよびPHEV主体で急成長してきましたが、EV普及ペースが鈍化すれば、最大の強みであるコスト競争力が活きにくくなります。
さらにEUでは、環境政策に加え、安全保障やサプライチェーン、アンチダンピングを理由とした中国製EVへの関税・規制強化が進行中です。これにより、BYDの欧州・日本市場での中長期成長シナリオは、以前ほど単純ではなくなりつつあります。
5. トヨタ自動車にとっての追い風要因
この環境変化は、トヨタ自動車にとって明確な追い風です。トヨタはEVに全振りせず、ハイブリッドを中核に、EV・水素・全固体電池と複線で技術投資を進めています。
EUでは、エンジン全廃が後退したことでハイブリッド比率の高いトヨタの競争条件が改善。日本では重量級EVへの増税が、燃費性能に優れたハイブリッド車への需要を後押しします。さらに全固体電池や水素エンジンという「ポストEV」の選択肢を持つ点も、政策が揺れる局面で大きなオプション価値となります。
6. 日本自動車株の割安度と投資妙味
日本の自動車株は依然として割安です。東証改革によりPBR1倍割れ企業への是正圧力が高まる中、トヨタ、ホンダ、日産といった大手自動車株はPBR1倍前後にとどまっています。
日経平均全体のPERが14倍前後で推移する一方、自動車株は業績改善後も評価が伸び悩んでおり、日本株バリュー投資の代表格といえる状況です。
7. 投資家としての戦略と注意点
中長期では、PBR1倍前後の大手自動車株を、世界景気や為替調整局面で分散保有し、配当や自社株買いを狙う戦略が有効です。一方、短期ではEU政策や米国関税、為替動向による値動きが大きく、イベントドリブンの視点も欠かせません。
8. まとめ:EV時代の次に来るもの
EV一辺倒の時代は転換点を迎えています。今後は「マルチパワートレイン」「現実的な環境政策」「産業保護」がキーワードとなり、日本の自動車メーカー、特にトヨタを中心とした銘柄が再評価される局面が訪れる可能性があります。
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